飛行場通りから各務原大橋へ向かう道の途中、ちょっとレトロな絵画教室の看板文字が目に入る。そこを南へ曲がると見えてくる、大きな窓のある建物が画家・奥村晃史さんのアトリエ兼絵画教室だ。
中へ入ると、画材や模型などがたくさん。その中で、羊が描かれた3枚のキャンバスが目に入った。羊たちの表情は今にも動き出しそうなほど写実的。けれどその装いは、少し現実離れしているようにみえた。背にリボンをかけ、アイロン台の上に佇む羊。私は色々と考えを巡らせてしまったが、お話を聞く中で、実はとてもリアルな作品なのだと感じるようになった。
「子どものころは誰もが何かしら絵を描いていたと思います。物心がついたころには多くの人が描くのをやめてしまうけど、私はそれをやめなかっただけです。」描けば描くほど上達し、出来ることが増えていくのが楽しく、画家への道へと進んでいったそうだ。
学生時代は、授業の合間をみつけては絵を描いていた。ジャンル問わず何でも描いては周りに見せていたそうだ。高校卒業後は国立大の教育学部の美術科へ進学。実践的な授業よりも座学の時間が多く、授業中に絵を描く習慣は座学によって続いた。長い座学の時間は、逆に絵を描く技術を磨く時間になったというから面白い。キャンパス内では様々な学部の学生に出会い、色んな立場の人を目にしたことも刺激となった。
「絵の理想のかたちは、その絵を通して分かち合えることです。」と奥村さん。「共感」は絵を存在しやすくするという。家畜には、人間と生きてきた一万年という歴史がある。人には家畜に対する共通認識があり、人にとって身近でどこか人間臭のある家畜から「人間」を抽出し表現できるのではと考えた。
キャンバスに描かれた羊を振り返り、なるほどと思った。人間の、羊に対する目線がとても現実的だと思った。
絵を描くうえで外部からの意図的な情報収集はしないという。生きていくことがインプットそのものだ、と。「無理に興味のないものを見たり環境を変えることはそもそも続かない。情報や刺激が少ないほうがかえって良いこともあるかもしれません。」
そんな奥村さんは人生の大半を、ここ各務原で過ごしている。自分らしく自然体でいるのにちょうど良いまちなのかもしれない。
奥村さんの個展や展覧会は年に数回開催されている。国内外、美術館・百貨店など様々であるが、作品を見せる機会を作っていくことが大切だという。
「作品は自分の分身であり、他人にとっての分身でもある。」その言葉からも、いかに共有することを大切にしているかがうかがえた。だからこそ、奥村さんの描く「僕“たち”の絵」は、全国各地で多くの人に共感を与え、心を掴んでいるのだろう。
村瀬 恵里佳MURASE ERIKA
食べることが大好きで、市内外の美味しいもの巡りをしています。 ライターを通してたくさんの繋がりができ、各務原での活動がより一層楽しくなりました!美味しい情報随時募集中。