JR鵜沼駅の北。大通りから一本入った住宅街の中にある花屋・Florist Doux Temps.。小さい頃から花とものづくりが好きで、フローリストになりたいと思ったと話すのは、石坂圭代さん。「地元の鵜沼が大好き。花の良さをたくさんの人に伝えたい」と、2008年に店を構えた。

地元の仲間に協力してもらった手作りの内装。「願えば夢は叶う」という店への想いは少しずつ形となっていった。
アンティーク調の棚には、古書や雑貨の装飾とともに、ほのかに香るサシェやドライフラワーボトルがさりげなく並び、天井や壁にはドライフラワーのリースやスワッグがかけられている。香りに誘われたその先には、スポットライトを浴びた生花。初めて見るものや珍しい色のものが数多く取り揃えられ、その美しさに目を奪われた。石坂さんが一番好きだと言う薔薇も、アースピンクやカフェラテなどエレガントな色合い。くすみカラーを基調としたシックな世界観に、私はまるでルノワールの絵画の世界に迷い込んだかのようで心が弾んだ。

トレンドを意識することはあっても、決して染まることはない。「自分が本当に好きでお勧めしたいものだけを取り入れる。ブレていけない」という師匠からの言葉を胸に、Florist Doux Temps.らしいスタイルを創り上げたからだ。
自ら見極め、仕入れているという花々。本当に可愛いと愛でる彼女の眼差しはとても温かい。好きが詰まったこの空間は、花々に癒されて時間が経つのを忘れてしまうという。優しい色合いと香りに、私の心もほっと落ち着いた。

取材の最後にブーケを束ねていただいた。生花を次々選び取る手に迷いはない。スモークツリーが薔薇やダリアをそっと包み込む、私好みのブーケ。その可憐な雰囲気に自然と笑みがこぼれた。
「人に寄り添うことが大切」と話す石坂さん。ギフトのオーダーでは、お客様との会話を通して、贈られる方を想像しアレンジをする。

ワークショップやウェディングなども手掛け、今年からはマルシェに出店するなど、活動の場を広げている。「花を介して人と触れ合い、喜んでもらえることが嬉しいし楽しい」。これからも多くの人の暮らしに彩りを添えていく。