
市民にとって、なくてはならない学校に。
地域との多様な接点が、障がいの理解につながる。
左から、和田さん、古田さん、大谷さん
−まずは、自己紹介をお願いします
和田:各務原市教育総務課の和田です。元々岐阜県の特別支援学校の教員をしていて、退職を機に市の職員として「かかみがはら支援学校」の整備に携わりました。開校した現在は、「かかみがはら支援学校」でさまざまなサポートをしています。
大谷:障がい者団体の「各務原市手をつなぐ育成会」の理事長をしています。知的障がいのある人やその家族のサポート、地域の方々に知的障がいを知ってもらう活動をしています。「かかみがはら支援学校」の設立は私たちの長年の望みだったので、素晴らしいかたちで実現して大変嬉しいです。
古田:協和建設株式会社の常務執行役員で、2025年度は各務原商工会議所青年部の会長を務めています。2026年1月には、「かかみがはら支援学校」の生徒さんと交流事業を実施させていただきました。
かかみがはら支援学校
−そもそも、「かかみがはら支援学校」はどのような経緯で設立されたのでしょうか
和田:各務原市にはこれまで、市立の「各務原特別支援学校」がありました。ただ、比較的軽度な知的障がいのある高等部の生徒が対象でしたので、知的障がいのある小中学生や中度・重度の知的障がいのある高校生、肢体不自由、病弱の子は、市外の特別支援学校に通学していました。特別支援学校は基本的には県が整備するため、市民のみなさんは長年、県に「各務原市にあらゆる障がいのある子どもが通える特別支援学校の設立を」と要望していましたが、残念ながら設置には至りませんでした。そこで、浅野健司・各務原市長が2019年に小中高一貫の市立の特別支援学校を設立することを決断されました。
大谷:各務原市は今までも特別支援教育に力を入れていて、小中学校にある特別支援学級が充実している点は素晴らしいです。一方で、そこに通えない子どもたちは小学生のうちから1時間以上かけて市外の学校に通っいたので、どうにかしたいと考えていました。
−開校まではどのような準備をされたのでしょうか

和田:市民の皆さんの願いから生まれた学校なので、「市民にとってなくてはならない学校にしたい」と考えていました。開校までは5年ほど準備期間があったので、まずは年4〜5回座談会を開いて、地域の方や、特別支援教育の専門家や先生、障がいのある子の保護者の方などに多様なテーマでご意見を伺いました。回数を重ねるごとに座談会のメンバーが増えていき、理解が得られるようになったと感じます。そのご意見が学校の設計や、具体的な体制づくり、教育内容にも生かされています。

大谷:この地域は高齢者の地域活動などが盛んな“地域力”の高いエリアなのですが、和田さんたちが丁寧に話をしてくれたおかげで、とてもウェルカムな雰囲気で開校できたと思います。
−待望の各務原市の特別支援学校がとても良いかたちで開校を迎えたのですね
現在、どれくらいの児童・生徒が通われているのでしょうか
和田:現在は全校で163人在籍しています。教職員は約90人いて、小・中学部は6人学級に教員2人、高等部は8人学級に教員2人がつきます。重度の障がいがある児童・生徒には3人学級に教員が2人つき、細やかなサポートができる体制になっています。
大谷:小中高が一貫なので、縦のつながりが生まれるのも良いですね。上級生が下級生の手伝いをしたり、読み聞かせをする子もいます。また、障がいの種類や重さがさまざまな子がいることで、これまでになかったコミュニケーションも生まれています。
−学校の特徴として「地域に開かれた学校」であるとお聞きしました
座談会の話からもその姿勢が伺えますが、具体的にはどのような取り組みがありますか
インクルーシブ遊具
和田:1つは、地域に施設を開放していることです。平日は18時〜22時、土日は 9時〜22時に、体育館やグラウンドを予約制でご利用いただいています。2025年6月に開始して以来、ほぼ空きなく使われていますね。校庭にある「インクルーシブ遊具」も授業時間以外は自由に利用でき、よく近所の親子が遊びに来てくれています。また、今、我々がいる図書館「本の森」は、市内の小中学校の校外学習の目的地となっていますし、ゆくゆくは地域の方が自由に出入りできる場にしていきたいです。
本の森
大谷:「本の森」の蔵書も、地域の方にご寄付いただいていますよね。私の知り合いの方にもご協力いただきました。
和田:月に1回オープンする「ひばり喫茶」も、地域のたくさんの方にご利用いただいています。高等部の生徒が、社会に出て働くための作業学習として食品加工を学んでいて、その一環として喫茶店を開いています。
ひばり喫茶
大谷:生徒たちは喫茶店の方から作り方を学んでいるので、コーヒーもお菓子も本当に美味しいです。整理券を配布するくらい人気で、クチコミでどんどん評判が広がっていますね。
和田:地域の方に喜んでいただけることが、子どもたちのモチベーションにもなっています。そのほか、「かかみがはら支援学校応援団」という組織も立ち上げました。座談会でつながりができた地域の方に開校前に掃除を手伝っていただいたのですが、開校後も「何か手伝いたい」という声を多くいただいたことがきっかけです。現在40人ほど登録があり、「本の森」にある蔵書の登録や整理、消毒、校庭の花壇や芝生の整備、雑巾などの消耗品や文化祭衣装などの提供などにご協力いただいています。
大谷:和田さんの提案で、学校の周りを散歩している方には防犯パトロールのボランティアもお願いしていますよね。私は、こうした日頃の何気ない地域との関わりが「開かれた学校」となるために一番大切だと感じています。和田さんは、地域の方が無理なく関われるかたちを考えることがとてもお上手です。地道な取り組みを続けることで、障がいの理解が広まるのだと実感しています。
−古田さんは先日、商工会議所青年部で「かかみがはら支援学校」と交流事業を行われたとのことですが、それはどういった経緯で行われたのでしょうか
古田:商工会議所青年部では毎年、市に提言書を提出しています。今年は市長から「どこかの団体や施設と何か協働してやってみては」と提案いただいたんです。そこで、2025年4月に開校した「かかみがはら支援学校」を青年部の会員が知るきっかけになればと思い、交流事業に取り組みました。また、弊社が「各務原特別支援学校」の建設やメンテナンスに携わっていたこともあり、新たにできた「かかみがはら支援学校」がどういった学校なのかも気になっていました。

−交流事業は、どんな内容だったのでしょう。会員の皆さんはどんな様子でしたか
古田:まずはオリエンテーションで、じゃんけんのゲームをしました。その後、子どもたちからは「かかみがはら支援学校のこと」、青年部は「各務原市の魅力」をテーマにクイズを出し合いました。青年部で用意したパネルに、みんなで答えを貼りあわせて、市役所に掲示する展示を完成させました。実施前は、会員からうまくコミュニケーションが取れるかといった不安の声もありましたが、終わった後は「やってよかった」と話していました。会員はみんな市内の事業所の代表なので、今後は卒業生の採用などにつながればと思います。
大谷:私は交流事業には直接関わっていませんが、「一緒に遊ぶ」というのがいいですね。障がいがあるからといって、常に受け取る側になってしまうと交流がしにくくなってしまいます。ぜひこうした取り組みを続けていただきたいです。
和田:県立の特別支援学校でも商工会さんとの関わりはあまりなかったので、こうした関係ができてありがたいです。企業さん同士の「横」のつながりで障がい者雇用への情報交換が進み、実際の就労に結びつくといいですね。

古田:青年部の会員の中でも障がいのある方を雇用している企業はあります。「障がいのある方を特別扱いはせず、工夫する」ということを意識していますね。
−最後に、今後取り組んでみたいことがあれば教えてください
古田:今回初めて交流事業を実施しましたが、今後も青年部として、「かかみがはら支援学校」や障がいのある方々との交流を続け、就労につなげていきたいと思います。私の事業所には清掃関係の関連会社があるので、将来的に受け入れられたらと考えています。
大谷:障がいのある子どもたちが地域の人と直接関われる機会が増えるといいですね。たとえば、ホタルをみんなで見る行事に一緒に参加したり、鵜沼宿のエリアとも関わりができたり、ゆくゆくは働く場ができたら素晴らしいと思います。
和田:市民のみなさんの声から生まれたからこそ、やはり地域や企業の皆さんと協力して、「市民にとってなくてはならない学校」としていきたいです。企業との関わりについては、青年部さんと関係ができて一歩前進しました。他にも、「本の森」の地域への開放や、「かかみがはら支援学校応援団」で子どもたちと直接関わる活動を実施するなど、まだまだ実現できていないこともたくさんあるので、一つずつ取り組んでいきたいです。