公園の賑わいをまちなかへ。官民連携で取り組む、
那加公園エリアのウォーカブルなまちづくり。
「各務原市民公園」、「学びの森」という2つの公園と、その周辺に広がる商店街を含めた「那加公園エリア」。2024年度、各務原市はこのエリアに新しい賑わいを創出するため、都市再生推進法人である株式会社OUR FAVORITE CAPITAL(以下OFC)とともに「那加 from Park構想」を打ち出し、「まちなかウォーカブル推進事業」をスタートした。国土交通省が創設したこの事業において、自治体だけでなく民間企業が事業主体となることは全国的に見ても稀な事例。今回は、OFCの今尾真也さん、各務原市職員の松下了さんが那加公園エリアを歩き、まちのプレイヤーの一人である葉山瑛介さんから話を伺い、エリアの目指す未来について語った。
2024年度からスタートした、「まちなかウォーカブル推進事業」
松下了/各務原市職員。都市活力創造課で那加公園エリアのまちづくりに携わる。
松下:今日は学びの森からスタートして那加公園エリアを歩きながら、「まちなかウォーカブル推進事業」ついてお話しましょう。
今尾:学びの森は、各務原市におけるウォーカブルなまちづくりの出発点でもありますよね。
松下:はい。まず、「まちなかウォーカブル推進事業」というのは、居心地が良く歩きたくなる空間をつくることで、まちに賑わいを創出することを目標に、国土交通省が創設した事業です。那加公園エリアには、まちのシンボルとも言える「各務原市民公園」と「学びの森」があり、「かかみがはら暮らし委員会」などの民間団体の活動や「KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE」のオープンで賑わいが生まれ、とても注目されるエリアになっています。この賑わいをまちなかに波及させ、公園からまちへ、人の流れを作っていきたいという考えのもと、市では「那加 from Park構想」というまちなかウォーカブル推進事業を進めています。
今尾真也/株式会社OUR FAVORITE CAPITAL代表取締役。2021年2月にまちのプレイヤーや金融機関とともに、まちづくり会社「OUR FAVORITE CAPITAL」を設立。
今尾:「まちなかウォーカブル推進事業」は一般的には行政が実施する事業ですが、各務原では市とOFCがどちらも事業主体として、同じ「那加 from Park構想」という名前でそれぞれ取り組んでいる点で、全国的にもすごく珍しいんですよね。
松下:そうですね。市は市民公園や道路の改修といったインフラ整備、空き店舗活用の補助制度の新設など、ハード整備を行います。でも、ただ整備するのではなく、OFCさんや民間事業者の方などの声を聞きながら事業を進めていくことを大切にしています。
今尾:OFCでは、空き家の活用やまちの回遊性を高めるための社会実験を行い、建物や歩道の新しい使い方を提案していきます。その結果を市と共有することで連携ができたらいいなと思っています。また、市の産業会館として使用されていた「東亜町会館」をお借りして、2024年8月には「TOUAMACHI KAIKAN」という複合施設をオープンする予定です。1階に飲食店が入居するほか、2階にPOP UPやイベントができるホールを作り、いずれ那加公園エリアで開業をしたい人がお試し出店ができるような場所を提供したいと考えています。
TOUAMACHI KAIKAN改修の様子
「官民連携」で行うまちづくり
松下:僕は過去にも別の課でまちづくりに関わり、「市が一生懸命やることで、まちが盛り上がるんだ」と思っていましたが、実際に事業を進めていくと、手の届かない部分がありました。行政では定められた計画期間の中でインフラ整備を行いますが、継続的な賑わいを生み出すには「市による整備が終わった後、どのようにまちで使われていくのか」が、とても大事だと気づいたんです。
今尾:まちづくりってチームプレイですよね。サッカーで例えるならばフォワード、ディフェンダー、ミッドフィルダーがそれぞれいて、お互いの役割をよく理解したうえで動いていく。市に対しても「こういうことをやってください」と要望するのではなく「こういうことをやりたいので、一緒にやりませんか」と対等に話ができる、それってとてもいい関係だなと思うんです。
松下:まちのプレイヤーの方との関係性を築くという意味でも、OFCさんはすごくありがたい存在です。行政って市民にとって馴染みのある存在ではないから、まちのプレイヤーの方々とは距離が遠くなりがちなんです。でも、このエリアでは「都市再生推進法人」としてOFCさんがいて、市とまちのプレイヤーを繋いでくださるので、とても風通しがいいなと感じています。
今尾:そうですね。今まさに、まちを盛り上げようと動いているプレイヤーがいます。JR那加駅前の交差点に誕生した「十’|TEN(テン)」(以下:TEN)を運営する葉山くんです。せっかくなので、話を聞きに行ってみましょう。
新しいまちの拠点
葉山瑛介/かかみがはら暮らし委員会のメンバー。2023年に「PEP UP CIRCLE」を立ち上げ、2024年1月にTENのプロジェクトを始動した。
今尾:葉山くんはもともと、古材・古道具を使ったリノベーションや什器の製作などを行う「PEP UP CIRCLE」を運営していて、その活動拠点として2024年1月からJR那加駅前にある古民家をリノベーションしてTENを始めたんだよね。
葉山:はい。TENは、大正時代の建物をまちのみんなでリノベーションをしながら、いろんな人がPOP UPやイベントを開催するような、常に開かれた場所にしたいと思っています。ここを拠点に、まち全体でいろんなヒトやモノ、コトが循環する、まちの拠点・まちの玄関としての役割を果たしていきたいと思っているんです。
今尾:TOUAMACHI KAIKANはこれからお店を始めたい人に対してチャレンジの機会を提供し、まちに新しい賑わいを作りたいという思いでスタートしますが、TENはもっと気軽にまちの人たちが集える場所ですよね。いろんな人がイベントをしたり、用事がなくてもふらっと立ち寄ったりして、コミュニケーションが生まれる場所だと思います。
松下:どうしてTENを始めようと思ったんですか?
葉山:僕の始まりは「学びの森」なんです。「かかみがはら暮らし委員会」に所属していて「学びの森に来てもらおう」と、とにかく学びの森を中心に考えていました。でも、そこからいろんな人と繋がったことで、できることが増えてきて。TENでは、“まちに対して何ができるか”という、さらに広く外向きの視点で場づくりを行っています。
面白いプレイヤーがまちをつくる
松下:民間の方がそういう公共的な視点を持って活動してくださるのはとても嬉しいことです。さらに那加公園エリアが面白くなるには、この先どうしていくと良いと思いますか?
葉山:大事なことは、やっぱり「人」じゃないですかね。新しいことに挑戦する面白い人がどれだけ集まるか。
今尾:まちって誰か一人の力で変わるものじゃない。面白い人たちがたくさん集まることでまちの魅力も増えていきます。そうやって市内外からメンバーがどんどん増えていくことが、非常に各務原らしいなと思います。この先、面白い人がたくさんやってきて、まちがどう変化していくのか楽しみですよね。
松下:市としては、熱意を持った人たちが活動しやすい環境づくりを行っていきたいです。OFCさんや葉山さんのように「まちを面白くしたい」という信念を持って活動されている人や団体が市内にいる、ということ自体が大きな財産だと思っています。民間の方々が今後どんどん活躍していける土壌をつくるのが、市の役割だと思っています。
今尾:那加公園エリアって暮らしながら商売をするのに適したエリアだなと感じています。だから、まずは小さなお店が増えて、お店をやってみたい人が始めやすいまちになったらいいですよね。数年後にはお店がもっと増えて、まちの新しい文化が生まれていることを想像するとワクワクします。また、2024年8月4日(日)にはTOUAMACHI KAIKANのプレオープニングイベントとして「那加デザインミーティングVol.2」を開催します。いよいよ、まちに点在するさまざまなプロジェクトが本格的に始動していくので、とても楽しみです!
【那加デザインミーティングvol.2】
官民連携でまちづくりに取り組む沼津市の方々をゲストに迎え、
これからの那加エリアのまちづくりについて一緒に考えます。
日時:2024年8月4日(日)19:30~21:00
場所:TOUAMACHI KAIKAN(各務原市那加東亜町106)
ゲスト:小松浩二(株式会社REFS 代表取締役/一般社団法人lanescape 代表理事)、渡會信介(株式会社沼津通信 代表取締役/わたらいクリーニング 代表)
渡邊和之(沼津市都市計画部緑地公園課職員/一般社団法人lanescape 理事)
詳細・申込:各務原市ウェブサイト専用ページ
申込締切:8月2日(金)
定員:100名