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「市営住宅DIYリノベ計画」から始まる団地の活性化。

FEATURE

「市営住宅DIYリノベ計画」から始まる団地の活性化。

「市営住宅DIYリノベ計画」から始まる団地の活性化。

学生のアイデアで市営団地に新たな風を。

2023.10.23

各務原市は、民間企業で構成される空き家リノベーション事業推進会議(以下、推進会議)・大学・金融機関が四位一体となってサポートする「DIY型空き家リノベーション事業」を行い、空き家の持ち主と借り手をマッチングしている。ステップアップを目指し、2023年からはこの事業をベースとした「市営住宅DIYリノベ計画」がスタート。各務原市、推進会議、岐阜女子大学の3者が連携をしながら、市営住宅の内装リノベーションに取り組んでいる。今回は、プランの作成から施工までを担当する岐阜女子大学家政学部生活科学科住居学専攻の山田彩芽さん、小森みゆさん、宮嶋莉子さん、高島唯衣さんの4名と、推進会議の一員であり今回のアドバイザーを務める株式会社ネクスト名和の名和豪敏さん、各務原市建築指導課の田口七海さんにお話を伺った。

左から宮嶋莉子さん、小森みゆさん、名和豪敏さん、田口七海さん、高島唯衣さん、山田彩芽さん。

ーでは初めに、皆さんの自己紹介をお願いできますか?

宮嶋:宮嶋莉子です。大学の授業では、集合住宅やコミュニティセンターの設計をしたり、既存の建物をリフォームして、室内を3DのCADソフトで立体化する手法の勉強などをしています。

山田:山田彩芽です。将来は、地元で就職をして地域の活性化に携われる仕事に就くことも検討しています。私は各務原出身なので、自分が生まれ育ったまちが今回の事業を通して良くなっていけば嬉しいなと思っています。

小森:小森みゆです。今回のプロジェクトは、実際の建物のリノベということで正直不安もありましたが、こんな機会はなかなかないのでワクワクしながら取り組んでいます。

高島:高島唯衣です。今回は自分たちの提案が実際の形になると思うと緊張感もありますが、すごく楽しみです。

名和:株式会社ネクスト名和の名和です。地域のプロパンガスの供給をはじめ、水回りの修繕やリフォームなど、暮らしの困り事をワンストップで解決する事業を行なっています。その中の「マルホデザイン一級建築士事務所」という事業部で、リノベーションを専門に設計施工までを行っています。今回のプロジェクトのように空き家の活用方法や、ビル一棟の再生などを手掛けています。

田口:各務原市役所建築指導課住宅係の田口と申します。建築指導課に配属されて2年目、入庁も2年目です。学生の皆さんとは年齢も近いですね。普段はまちの景観に関すること(建物の色彩や屋外広告物の審査業務)や市営住宅の運営管理、今回の「市営住宅DIYリノベ計画」のベースとなる「DIY型空き家リノベーション事業」を担当しています。

ー ありがとうございます。ではさっそく、田口さんに今回の「市営住宅DIYリノベ計画」がスタートしたきっかけを伺いたいと思います。

田口:各務原市には、毎年職員が自主的に事業を企画・提案できる「あさけんクエスト」(職員提案制度)があります。2016年度に若手職員の提案から始まった「DIY型空き家リノベーション事業」が今回の「市営住宅DIYリノベ計画」のベースとなっています。

実は私も各務原市の「DIY型空き家リノベーション事業」で移住してきました。お世話になっています!

名和:へー!

田口:ありがとうございます。こちらこそお世話になっております。(笑)

物件の持ち主が修繕義務を負わない代わりに安く空き家を貸し出すことで借り手は自費で自由にDIYでき、さらに退去時の原状回復の義務がない、という各務原市独自のプロモーション事業なんですよね。

田口:はい。実は最近、その空き家の物件登録数が伸び悩んでいるという問題がありました。新たな取り組みを通じて事業を活発化できないだろうか、ということで、「DIY型空き家リノベーション事業」とは別の若手職員メンバーが今回の「市営住宅DIYリノベ計画」を企画。職員提案制度でプレゼンをし、採用されました。例年、岐阜女子大学にはモデル空き家のリノベーションプランを作成いただいているのですが、なかなか実践の場がなく、市としてもDIYのハウツーを学べる場を提供したいという思いがありました。

市営住宅は、修繕料が年々増加しており、予算的にも手が回らないという状態で。今回は、学生の皆さんとプランを作成し、現場でDIYを実践をしてもらうことで、修繕費を抑えながら実践の場の提供もできる機会となりました。いくつかある市営住宅のうち「雄飛ケ丘第2住宅」の3DKのお部屋でDIYを行います。1970年頃に建てられた古い建物ということもあり、学生の皆さんの若い感覚を内装デザインに活かしていただければと思っています。

ー ありがとうございます。名和さんは、推進会議に登録されていますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

名和:4年前~5年ぐらいですか?

田口:そうですね、コロナ前で。

名和:その時期、「DIY型空き家リノベーション事業」に参画させていただきました。弊社の事業としても「リノベーションを選択する人たちにとって、良い環境作りをする」ということをミッションに掲げており、学生や行政が取り組んでいるところを現場サイドで見てみたい、という思いがありました。実際にプロ側から見たときの行政の課題感や学生の肌感を体感させていただいています。今回の事業は、学生が考えたプランニングに対してアドバイスをさせていただくという形で関わっています。

ー 実際に学生の取り組む様子を間近で見られていかがですか?

名和:私たちが大学生の頃はスマートフォンがなかった時代ですので、CADなどを活用してCGを作る技術などは圧倒的に高いと感じますね。

ー 学生の皆さんは、名和さんのように現場で活躍されている方から指導を受けてみて、驚いたことや発見、すごいなと思ったことなどはありましたか?

名和:なんか恥ずかしいですね(笑)

一同:(笑)

高島:仕上げ材を選ぶ際に素材のサンプルを持ってきていただいて、実際に触りながら選ぶことができました。写真などで見ているだけでは想像が難しい部分もあるので、実物を見てイメージを膨らませることができました。空調の配置変更などの細かい部分について、プロならではの視点で助言をいただくことができて勉強になりました。

実際に施工される物件を手がけるのは今回が初めてですか?

高島:実際に施工までした経験はありません。大学の実習として、学校の敷地内にある実習棟のテラスを作った経験があります。木材のカットから塗装、屋根板貼りや補強などを行いました。

今回プランニングをするにあたって、市営住宅ならではの大変さや印象的だったことはありますか?

小森:お風呂の浴槽は入居者の持ち込みというのは初めて聞きました。 お風呂は付けたいなあ、持ち込みかあ…と驚きました。

田口:浴室は浴槽もシャワーもなくて、すっからかんな状態なんです。

名和:今、浴室の壁は塗装しようとしてるのかな?

小森:そうですね。

山田:トイレも独特でした。

宮嶋:そうですね。柱が張り出ていて狭い感じでした、広くしたくてもできなくて。

高島:あとは、エアコンの数を減らすこともができないですね。2部屋の間仕切りを無くして1部屋にする際、それぞれの部屋に設置されていたエアコンの片方を取り外して1つにしようと考えていましたが、現時点では外すことができないそうです。換気扇の交換や取り外しにも制限がありました。

名和:換気設備が補助金で設置されている場合などは制限があるようですね。

山田:あとは、構造上間取りが変更できない部分があり、その点は苦戦しました。

一般的な住宅に比べても様々な制約があるんですね。その中でも、特にこだわったポイントなどがあれば教えてください。

山田:入居する世帯構成の条件が4人以上となっていたので、30代の両親、小学校に入りたての子ども、幼稚園児の4人家族で想定しました。古い建物のビンテージ感をかっこよく活かせるよう、色使いなどもインダストリアルモダンの雰囲気で統一しています。

宮嶋:丸見えになってしまうエアコンの配管部分は隠すことも考えましたが、インダストリアルモダンのコンセプトに合わせてあえて見せるなど、限られた条件の中でも工夫をしました。

田口:和室をあえて残してくるプランもあるかなと思っていましたが、床は現代の生活様式に合ったクッションフロア仕上げをチョイスした点が、今どきだなと感じました。公営住宅だから起こる住み替えを考慮して、飽きのこないシンプルな色使いもよかったですね。

様々な難しい条件がある中で、さらにメンバー全員の意見をまとめるというのは大変そうですね。

小森:私は意見をまとめることが苦手なのですが、チームのメンバーに助けてもらいながら協力して取り組めたのでよかったです。

宮嶋:メンバーそれぞれが思い描いてる像が異なるので、それを1つのものにするのはなかなか難しかったです。でも、1人では思い浮かばなかったアイディアなどをみんなで詰め込んでいくと、案外ものになるんだなということがわかりました。

高島:皆のイメージしているものが揃っているかを確認し合うのが難しかったです。仲の良いメンバーだったからこそ意見は言いやすかった反面、反対意見が出た時にどう調整していくのかを考えるのは難しかったです。

ー そういう時はみなさんどうやって決めたんですか?

高島:お互い説得し合いました。これは違うんじゃない?とか…

宮嶋:これはこっちの方が良いでしょ~とか。

小森:みんな思ってることはあったかもしれないけど、折れ合いみたいな感じです。(笑)

学生の皆さんも色々と苦戦された部分があったようですね。学生の皆さんにアドバイスや指導をされる上で大切にされたことはありますか?

名和:「こうあるべき」というものにとらわれず自由な発想で取り組んでもらえるよう、言い過ぎないように気をつけました。現場経験がない場合は情報の取得方法はインターネットがメインになってしまうため、材料なども紹介しながら色々な知見を広げてもらえればいいなと思いながら関わらせてもらいました。

田口:私が学生で建築を学んでいた頃は、プロの方と話したり、実際に現場で手を動かすことはなかったので羨ましいです。その一方で、ちゃんとコミュニケーションが取れるかな?という不安もありましたが、実際始まってみると和気あいあいと進められていたのでよかったです。

初めての顔合わせの時も良い雰囲気でしたよね

名和:フレッシュ感がありましたよね。

田口:そうですね事業者さんのコミュニケーション力に助けられました。

実際の施工は岐阜女子大学の1年生~3年生の皆さんが交代でされるそうですね。来年以降取り組む学生からも、先輩のお手伝いの経験を生かしたより良い提案が生まれるといいですね。

田口:そうですね。想像だけでは分からなかった部分も、実際に現場でやってみると、納まりが悪いじゃん!とか分かったりするので、そういう経験を踏まえた上でプランニングすると、より細かく詰めてプランニングができるのではないかと思います。また、市としても学生が事業者と関わることで進路の選択肢が増え、企業さんにとってもPRの機会になれば嬉しいなと思っています。

名和:行政の関わり方がもう少し柔らかくなって、学生もやりたいことが色々な形で表現できるようになるといいなと思いました。今回のプロジェクトを見ていても、学生たちはペルソナ設定がとても上手だと感じました。暮らしのことをしっかり考えられているなと。行政の持つ社会課題をそのまま学生にぶつけて、「どう解決していこうか」という段階から参加してもらってもいいのかもしれませんね。一緒に考えて市長に提案できる座組を作った方が、もっと様々なことが加速化されるのではないかと思います。

確かに、社会課題が広く議論されるようになることで、また新たなイノベーションが起こるきっかけになるかもしれませんね。協力といえば、 5月に行われた市と岐阜女子大学と推進会議メンバーの顔合わせ会に参加した際、4つの学生チームそれぞれに1社~2社の事業者が入られている様子を見て、協力体制の凄さに驚きました!

田口:本当にそう感じます。今回この事業を始めるにあたって各事業者に案内をしたところ、プランニングや施工など、各得意分野で多くの方が名乗りを上げてくださり、とても協力的な反応をいただきました。学生の皆さんにも、市営住宅という制限の多い難しい条件の中でうまくプランニングしていただき、周りの方々の協力のおかげでこの事業がうまく進んでいるという実感があります。ありがたいですね。「DIY型空き家リノベーション事業」では市と事業者、市と学生など個々の関わりしかなかったため、この「市営住宅DIYリノベ計画」をきっかけに新しい繋がりが作れたらと思っています。

ー 学生の皆さんは実際に取り組んでみて「こうしたら良くなりそうだな」というような気づきはありましたか?

高島:実際に雄飛ケ丘団地に住んでいる方のリアルな声を聞ける機会があればいいなと感じました。今回は自分たちで居住者の設定ができたのでプランニングはスムーズでしたが、やはり住んでいる人にしか分からない事があるのではないかと思います。

ー 普段から課題を現実的に捉えて学ばれているんですね。

小森:現実はこうだよ、という視点で話をしてくれる先生は多いように思います。「これはできないよ」とはっきり言われます。

ーこれから本格的にDIYの工事が始まりますが、現段階で学生の皆さんが「市営住宅DIYリノベ計画」に携わってみた感想などをお話いただけますか?

高島:今まで新築の設計を手掛けたいという気持ちが強かったのですが、実際にリノベーションに取り組んだことで、現にあるものを活かす面白さを学ぶことができました。

宮嶋:大学の授業で先生から聞く言葉と事業者の方が話されることが、どちらも正解なんでしょうけど若干違う部分もあるので、現場ならではの意見をいただけることがこの事業の私達にとっての一番のメリットかなと思います。

小森:プランニングを始めてからあっという間にここまできて、自分たちが考えたものが形になるんだ、という楽しみと驚き、不安も少しあります。私は就職活動で何をしたらいいかわからず迷っていましたが、今回のように自分たちで考えたものを事業者の方々と連携して取り組むという経験を通して、リフォームの楽しさに気づくことができました。

山田:私は幼少期からものづくりに関心があり、厚紙などで小さい家を作ることが好きでした。自宅をリフォームする番組が大好きでリフォームに対しての憧れもあり、今回の事業に携われてとても楽しいです。憧れもさらに強くなりました。高齢者から若い人たちまで幅広い年齢層の方々に住んでもらい、団地全体が活気づくといいなと思います。今回は一部屋のみのリノベーションですが、今後は後輩たちが受け継いで違う部屋のリノベーションを進めていくことで、どんどんこの団地が盛り上がっていってほしいです。

ー名和さんは「市営住宅DIYリノベ計画」に携わってみて、いかがですか?

名和:市営住宅の1室だけをリノベーションしただけでは大きく何かが変わることはないと思いますが、「一棟丸ごとやろうよ!」ぐらいの事ができたら、協力してくれる大人や事業者は集まると思いますよ。この若いエネルギーがまちを動かすぐらいのことが、今後起これば良いですね。

ー今回が、その起爆剤のような役割になれば嬉しいですね。学生の皆さんは、このプロジェクトに関わったことで各務原市にどのような印象を持ちましたか?

全員:私たち学生の案を取り入れたプランが実現し、実際の工事にも参加できるなど、若い人たちが活躍するチャンスが用意されている印象です。今後も市全体が盛り上がって、住み良い街になっていってほしいです。

ー学生の皆さんがもっと外に出ることで、新しい視点から面白いアイデアが生まれるきっかけになるかもしれませんね!市としては、この事業は今後も継続して、という想定ですか?

田口:基本的には今後も継続し、いずれは団地のワンフロアをすべてDIYのお部屋にできれば、と考えています。ただ、実際にやってみないと分からない部分もあるので、今回の結果を踏まえてスケジュールやDIYの規模感、予算の調整なども行いながら進めていく予定です。

ありがとうございました。2024年の2月中旬ごろにお披露目予定ということで、皆さんが考えられたお部屋が形になるのを楽しみにしています!

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2023.10.23

WRITER PROFILE

小澤 ことはozaco design

2019年に家族で各務原市へ移住してきました。普段はフリーランスとして、デザインを中心にライティングなどのお仕事もさせていただいています。お仕事を通して暮らしているまちに何か還元できて、結果的に周りの大好きな人たちの幸せにつながる。そんな働き方がしていければ、とても幸せです。

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