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高い技術力を活かした大人の本気遊び。

FEATURE

高い技術力を活かした大人の本気遊び。

高い技術力を活かした大人の本気遊び。

社員の「やってみたい!」から生まれる新たなプロジェクト。

2022.07.14

各務原市の主要産業である航空機産業は、高い技術力を持つ数々の企業に支えられている。
その中には、従業員が主体となってプロジェクトチームを立ち上げ、その高い技術力を活かした新たな事業に取り組み始めた企業がある。今回お話を伺ったのは鳥羽工産株式会社の大橋潔さん、有限会社大堀研磨工業所の金岡冬樹さん、岩戸工業株式会社の望月隆史さん。BtoBからBtoCという今までとは全く異なったフィールドにもかかわらず、楽しみながら商品開発やマーケティング、ブランディングに取り組んでいる。高い技術力を持った大人たちが本気でやりたい事を実現させたら、どんな面白いことが生まれるのだろう?

ーでは初めに、皆さんのお仕事について教えていただけますか?

大橋:鳥羽工産株式会社は各務原市と可児市に工場があります。川崎重工さんと取引があり、当初は航空機関係を主にやっていましたが、途中から自動車もやらせてもらうようになりました。航空機は試作と量産、自動車は試作や開発をメインに行なってます。今では自動車と航空機の割合が7:3ほどと、自動車の売り上げの方が多くなっています。コロナの影響で2年ほど前から業績が落ち込み、社内での従業員のモチベーションも落ち気味になってしまいました。そんな中「何かモチベーションを上げる方法はないかな?」ということで今回のプロジェクトが立ち上がりました。

金岡:有限会社大堀研磨工業所の業務課で働いています。弊社は、何ミクロンという単位で金属を研削する(磨いて削る)加工をしています。航空機や医療、自動車など幅広い分野で仕事をしています。現在は入社して6年目です。3年間現場にいて、3年前に業務課に異動してきました。主に金属加工業の営業や生産管理を行いつつ、ひこうきやさいを担当しています。ひこうきやさいを事業化したのは2016年ごろ。社風として、一つのジャンルにこだわらず新しいことにどんどんトライしよう!という考え方があるため、その中で事業が始まり今に至ります。

望月:岩戸工業株式会社は、主に航空機の組み立て作業、バス車両の改装やリニューアル、工作機械や板金作業の3つを軸に行なっています。 今回、自社の新しい商品を作りたいということからプロジェクトが立ち上がり、キャンピングトレーラーの製作が始まりました。


株式会社鳥羽工産の大橋さん

ーありがとうございます。今回、新しい取り組みをされているとのことですが、お話いただけますか?

大橋:弊社の自動車部門は、量産ではない少量多品種の事業を行なっています。 今まではメーカーからの依頼を受けて製作をするBtoBでしたが、業績が落ち込んでいました。社長との話の中で最近は旧車が流行っているという話題が出て、弊社が持っている設備で旧車の部品を作るのも面白そうだとなりました。従業員も興味を持ってくれるのではないかと、去年の2月にプロジェクトチームを立ち上げることになりました。 当初は5〜6名のチームで考えていましたが、社内全員に旧車プロジェクトの募集をかけると17名ほどの応募がありました。思いがけない多さだったので選抜試験を実施して選ぼうとしましたが、熱意が強くてなかなか絞りきれませんでしたね。

ー嬉しい悲鳴ですね。

大橋:初めてのBtoCでお客さんのニーズを探る必要もあるということで、5〜6名の予定を9名にし、ものづくりチームとマーケティングチームに分かれて活動を始めました。まずは日産のS30という人気車種のフェンダーなどをスキャニングしたり、トヨタスポーツ800のホイルキャップを作り始めました。S800の10穴のホイルキャップは実物がなかったため、8穴のホイルキャップをスキャニングし、アレンジを加えて10穴風にしたり。 昨年11月に大阪で行われた「昭和レトロカー万博2021」に出展して、たまたまS800のオーナー会の会長さんから声をかけてもらい、こんなことができますよと話をしたところ、10穴の本物をスキャニングさせてもらえることになりました。

ーたまたまですか、凄いですね。

大橋:出展することはあまりないのでガッカリする結果になるのでは…ということも考えましたが、実際に出展してみると思っていた以上の反響がありました。そんな中、市のブランディングセミナーでホイルキャップの取り組みについて話した内容を新聞記事で取り上げていただき、それをみた近くに住むオーナーさんとも出会えました。協力し合い、今は完成の一歩手前まで来ているところです。旧車を持っている方と情報交換をする中で熱い想いを直に感じると、応えたいという気持ちになりますね。頑張っていきたいと思います。

ー色々な偶然が重なってご縁もあったということですね。

大橋:そうですね。2日ほど前には新聞記事を読んだという市内のレストアカーを扱う会社から連絡があり、ぜひまた工場見学や打ち合わせをしましょうという話も出ています。今後話が広がって、従業員のモチベーションも上がっていけばいいなと思っています。社内で新しい取り組みが周知されるうちに、こういうものを作りたい!という声も出始めました。

ープロジェクトメンバーの皆さんが楽しんで取り組んでいる姿に、他の社員の皆さんも影響され始めたということでしょうか。

大橋:自分達も何か作りたいということで、今ではメインで募集したチームとは別に派生したチームが2つできています。 ゴルフ好きのメンバーが集まってレーザー加工機でネームプレートを作ったり、BBQ好きが集まって、航空機の部品製造に使用している液圧成形機を使った曲げ加工の鉄板を作ったり、各々が好きなことを楽しんでいます。

ー高い技術を活用してやりたいことを形にできるなんて、ワクワクしますね。プロジェクトが始まって、社員の皆さんのモチベーションが高まってきたという感じはありますか?

大橋:まだごく一部ですけど、ありますね。炭みたいなもので、なかなか火がつきにくい。つき始めるとズバッと盛り上がっていく。今までは言われた物を一生懸命作ることがメインで自分で発想して取り組むことがなかったので、火おこしをしているところですね。

有限会社大堀研磨工業所の金岡さん

金岡:ひこうきやさいが始まったきっかけは、「事務所が暗いよね」という話からでした。そこで緑があると和やかになるんじゃないかな。せっかくなら食べられるものをと簡単なベビーリーフの栽培キットを育てるところから始まりました。それが少しずつ広がって6年前に事業化に至りました。その背景には、セカンドライフ、セカンドキャリアとしてやりがいを感じられる新たな働き場所を作るという目的もあります。高精度の加工が求められる職人業ということもあり、60歳、65歳、70歳と、年齢とともに視力や体力が低下して働けなくなってしまう人が出てくる。それでも気持ちは元気で、働きたい!という声もありました。その人たちのために何かできれば、という想いが事業化につながりました。

ーどんなお野菜を育てられているんですか?

金岡:今はベビーリーフやマイクロリーフ、エディブルフラワー、発芽ニンニクなどの珍しい品種も商品化して、県内のレストランやホテル、ネット販売を通した全国展開をしています。コロナ前までは市内や県内のレストランが多かったのですが、需要はどうしても落ちてきてしまって。今ではコロナで盛んになったネット販売をうまく活用し、徐々に売り上げが伸びてきました。正直まだ黒字にはなっていませんが、6年目でやっと黒字方向に向かっているという感じですね。ひこうきやさいと金属加工は全く別なので、社内でも「なぜやっているの?」という声がどうしてもあります。ひこうきやさいという取り組みを通して、社内で新しいことに取り組む人を応援したい狙いもあるので、やり続けることで「独自ブランドを作りたい」など、新たなことに挑戦する人が現れるという副産物的なものも期待しつつ、ひこうきやさいを事業として確立していくことが会社の想いです。

ー皆さん普段から野菜の隣でお仕事をされているということでしょうか?

金岡:今は第2工場で野菜の施設を作って、そこで水耕栽培を行なっています。

大橋:すごく綺麗な環境で育てなくてはいけないですよね。

金岡:そうなんです、クリーンルームで70歳前後の方が5名ほど作業を行なってくれています。僕ともう1人のスタッフで販売営業を担っています。

ー以前から行われているものづくりでの徹底した温度管理の技術が栽培にも活かされているとウェブサイトで拝見したのですが。

金岡:そうですね、金属は温度が1度上がるだけで膨張して大きさが変わってしまうため、高精度で削るためには徹底した温度管理が重要。その部分は植物にも活かせます。あとは、ちょっとしたことに気づける職人的な気質やノウハウも農業に活かされているのかなと思います。請負加工業者ということもあり、言われたことに応えるのは得意なのに対して、自分達で何かを考えてやってみることが苦手なので、 その中でどうやって育てて売って広告して…と考えるのが新しくて楽しい部分でもあります。この経験を、ゆくゆくは本業の方にもフィードバックしていく、という流れになっています。

ーこれから、もっと広げていこうという動きはありますか?

金岡:今のところミシュランを獲得しているレストランでも使い続けていただいているので、一定の評価はもらえています。県内の有名なレストランでもご使用いただくなど、品質的には自信を持って出せるものを作れていると思うので、広げていきたい気持ちはあります。できれば世界にもと考えていますが、ひとまずは全国での販売を増やしていきたいですね。

ー私たちもどこかで購入することはできますか?

金岡:各務原イオンのわくわく広場や、食べチョクなどのECサイトから購入ができます。Instagramもやっているので、そこから確認できます。

岩戸工業株式会社の望月さん

望月:お二人のお話を聞きながら、いろいろと共感できる部分がありました。弊社は、もともと会社として新たにオリジナルの商品を作っていきたいという気持ちがあり、1年半ほど前からそれをカタチにするため、全社員にアイデア募集という形で「何を作ってみたいか」を聞くところから始まりました。

ー全社員さんからですか。凄いですね。

望月:結果的に、100件以上の案の中で最も多かった「キャンピングカー」「キャンピングトレーラー」を作ることになりました。案を出してくれたメンバーで3グループ4人ずつのプロジェクトチームを作り、マーケティングを行って「どんなものを作っていこう」と調べるところから活動が始まりました。普段は工場で働いている人ばかりなのでマーケティングも初めてで、手探りの状態で進めていましたが、最終的に1つの答えを出して動くことになりました。会社役員へ向けたプレゼンも皆で行い、承認を受けて進めていくことに。僕はこのプロジェクトをきっかけに、ずっと携わっていた航空機の職場から離れて、キャンピングトレーラーを作る方でやっていくことになりました。

ーそれは大変なことですよね。

望月:19〜20年間ぐらいずっと航空機の職場で働いてきたので、全然違う世界に飛び込んで苦労する部分もありました。設計、製造、今後は販売まで自社でやっていく方向で進めています。販売にあたって必要な商品名も全社員から募り、その中からプロジェクトメンバーで相談して決定しました。先日、各務原市民公園で開催された「桜まつり」でも展示し、たくさんの人に見てもらうことができました。興味を持って見ていただけて、いい展示になったなと思います。販売までには、見直しや改修を重ねて製品として出せるようにしていく必要がありますが、まずは試作1号車として作ることができました。

ー200名ほどいらっしゃる全社員さんからアイデアを募るというのはかなり大変なことのように感じますが、今までにもそのような場面はありましたか?

望月:なかなか今まではそういうことはなくて、初めてだったのではないかと。 社長の「社員みんなでやっていく」という想いから来ているのだと思います。

ー設計は皆さんでとのことですが、細かいデザインや素材選びも皆さんで決定されたんですか?

望月:大きなデザインはバスの製作を一緒に行なっているデザイナーさんと検討して進めていきました。

ー今までの繋がりも活かしながら、ということですね。
ちなみに、カスタマイズができるということですが、どのような特徴がありますか?

望月:大量生産ができないので、個々に合わせて作りやすいというのがありますね。 あとは、航空機の要素を取り入れたり、バスの要素を取り入れたり。色々な違うジャンルの要素を取り入れて作ることができます。

ーキャンピングカーに航空機の要素を取り入れる、というのが想像できなくて、具体的にどういう感じになるのかが気になります。

望月:今回作った車両も、アルミをメインで使用するなどして軽量化を図っています。キャンピングカーでよく目にするアメリカの「エアーストリーム」という車両もアルミで作ってリベット(大きなボルトのようなもの)で留めていて、それも航空機の技術が取り入れられています。そういうのが好きな方も結構多いので、そういった要素を取り入れたり。

ー遊び心がくすぐられそうですね。望月さんもキャンプはされますか?

望月:そうですね、もう10年ぐらいキャンプが好きで。「キャンピングカーが作りたい」と書いて、始まりました(笑)

金岡:会社が案を取ってくれるというのがいいですね、なかなかない。

ーここまでのお話を伺う中で、会社側が社員の声を聞いたりカタチにしたりと「社員を大切に思う気持ち」を感じました。本気で楽しんで取り組める環境ということですね。

金岡:「こういうことをしたい」という時にやらせてくれる、そういう声を大事にしてくれる社風だなと思いますし、それがモチベーションにもつながっていると思います。それが形になった時にやりがいも感じるし、仕事って面白いなと思います。弊社は規模が小さいこともあり、風通しが良く上の声も下の声も届きやすい部分もあるのかなと思います。

大橋:従業員に対しての想いは非常に強いと思います。資格取得も必要であれば取れるまでフォローするという体制もありますし、新しいことに対しても全力で応援してくれます。従業員の生活が豊かになってもらいたい、スキルを上げて充実した仕事や人生を送ってもらいたいという気持ちがあると思います。大きな企業だとサバサバとした関係の会社もありますが、温かい雰囲気です。

ーありがとうございます。皆さんが持ってらっしゃる技術を結集して、全く別のものを作るというのまた面白そうでワクワクしますね。

望月:いいですね。

金岡:たまに、作りたいなぁと思うこともあります。

大橋:そういうイベントがあるといいかもしれないですね。

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2022.07.14

WRITER PROFILE

小澤 ことはozaco design

2019年に家族で各務原市へ移住してきました。普段はフリーランスとして、デザインを中心にライティングなどのお仕事もさせていただいています。お仕事を通して暮らしているまちに何か還元できて、結果的に周りの大好きな人たちの幸せにつながる。そんな働き方がしていければ、とても幸せです。

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