
「鵜沼が大好きなんです」と語るのは、「棗(なつめ)」オーナーシェフの中村立志さん。
実は中村さんは各務原市生まれではない。埼玉県鴻巣市で生まれ育った。料理を作ることが好きだったこともあり、料理人の道を目指し、東京の調理師専門学校へ。卒業後は京都を目指していたが、調理師学校の先生のすすめもあって岐阜にくることになった。それが中村さんと岐阜との縁の始まりである。
岐阜については「まったく知らない土地だったが、水がおいしくいい所だと感じた」と言う。岐阜市内のミシュラン星付き和食店、東京門前仲町の寿司居酒屋、岐阜市内のホテルで修業。そこで出会った山口嘉三さんとともに2015年1月に鵜沼みどり坂沿いに「棗」を独立開業。鵜沼の地を選んだのは、岐阜で出会った奥様が各務原市鵜沼地区出身だったからだ。住まいも鵜沼地区にあり、子育てもしている。
「鵜沼は交通の便が良く、生活に困らない」と言う。
オーナーシェフになったことで、「自分のやりたいことができるようになった」と言う。「自分がおいしいと思えるようなものを提供したい」という思いから、昆布とカツオで出汁をとるなど、基本には忠実になるように心がけている。「岐阜は畑や山も多く、いろいろなものが採れる。海がなくても、交通の便がいいので、海産物もいいものが手に入る」と言う。
手仕事の良さが伝わってくる料理の数々。見た目の良さだけでなく、味も裏切らない。季節感を感じられる店内の雰囲気もあいまって、自然の滋味を感じることができる。
茶碗蒸しをいただいたが、出汁のうまみを感じることができた。なめらかな食感は豆乳を使っているからだそうだ。魚に関しても「和食だと鮮度が一番。でも寿司居酒屋で修業したときは正反対だった。寝かせることでうまみを引き出すなどの工夫を学んだ」と言う。その経験を生かして、魚の提供の仕方を工夫していると言う。
鵜沼みどり坂に店を出すにあたっては、近所の人々から、「こんな場所に出しても、、、」と言われたそうだ。しかしながら、現在は各務原市内以外からも訪れる人が増え、昼は満席のことが多い。特に宣伝はしていないそうなので、口コミでおいしさが伝わったと言ってもよいだろう。
昼は一つずつ提供される「昼膳会席」(2300円)と箱に入った「松花堂弁当」(1800円)。夜は3500円、4500円、5500円の「会席コース」(すべて税抜き価格)。料理の内容は基本的に月替わり。月に何度も来店される客には内容を少し変えて出す配慮をしているそうだ。基本コースに追加する形でアラカルトもある。私はアラカルトで「脱皮ガニのから揚げ」をいただいた。脱皮したてなので、殻が柔らかく、カニそのもののうまみを感じることができた。
日本酒も常時20種類ほどを揃えている。3種類で一合の飲み比べセットもあり、利き酒をしたい人にもお勧めだ。
店内はカウンターとテーブル席。掘りごたつのお座敷席もある。おひとりで来られる方もいれば、お祝い事などのあらたまった席でも利用されることがあると言う。地域密着の店を目指しているので、気軽に来てほしいとのこと。
棗
棗 ナツメ
各務原市鵜沼東町7-1
営業時間:11:30~14:00、17:30~21:00
定休日:月曜日・第1火曜日
TEL:058-372-2121
篠田 雄一朗SHINODA YUICHIRO
岐阜市生まれ、東京育ち。親の介護のため帰郷。2019年3月に岐阜市ではなく、あえてあまり知らない各務原市にJターン。各務原の良さを知り、発信していけたらと思います。