金属団地の西側を南に向かって延びるスチールロード。看板を目印に少し入った田んぼの真ん中に果実香はある。スーパーを営んでいた店主の堀俊朗さんが24年前にオープンした果物が楽しめる喫茶店だ。開店当初について堀さんは、「周りに喫茶店が多く、奥まったこの場所にお客さんが来てくれるか不安だった。」と振り返る。それが、今ではテレビやSNSで話題となり、市内外から幅広い世代が訪れる人気店である。
どこか懐かしさを感じる店内に足を踏み入れてみると、一番に色鮮やかな果物たちが目に飛び込んでくる。メロン、ぶどう、オレンジ、りんご…旬の果物が数多く並ぶ。果実香では果物の販売もしている。お店で食べた果物を買って帰る人、贈答用に毎年購入する人もいるそうだ。
席に着いて、一押しメニューだというメロンジュースを注文する。メロンジュースで680円は、どう考えても破格である。オープン当時から価格が変わらないというから驚きだ。商品が来た瞬間、僕は自分の目を疑った。メロンが半分丸ごと運ばれてきたのだ。よく見ると中身がくり抜かれていて、果肉がゴロゴロと入ったジュースがなみなみと注がれている。それだけではない。朝でもないのにモーニングまでついてきた。パンだけでなく果物も盛られている。関西出身である僕にはなじみがなく衝撃的だった。ひと口ジュースを啜ってみると、メロンの一番甘いところがギュッと詰まった味がして、つい顔が綻ぶ。果肉はふわふわとしており、口の中が楽しい。
「4種類のフレッシュジュースは、全部手絞りですよ。」と堀さんは微笑む。「それに長年、青果を扱ってきましたからね。」優しそうな瞳は、果物を50年以上見てきたプロの目だ。目利きはもちろん、食べ頃も逃さない。お店で提供されている果物は信頼のおける市場から卸しているだけでなく、全て堀さんが食べ頃を見て提供してくれる。そりゃ、僕が家で食べるよりもずっと美味しいはずだ。
今流行のフルーツサンドもいただく。果実香では、こちらもオープン当初からの人気メニューだ。口に入れると、キウイとグレープフルーツが弾ける。その中に潜む甘いバナナにまた笑みがこぼれる。クリームも甘過ぎずバランスが絶妙である。フルーツサンドには季節の果物が入るという。冬のいちごが入ったのも美味しいだろうな。ぜひまた訪れてみたい。このように季節が楽しめるのも果実香の魅力の一つだ。幼い頃に果実香を訪れた取材班の一人が「初めて食べた時は衝撃だったなあ」と笑って話してくれた。
僕は果実香を訪れて、果物を食べる楽しさを知った。果物が好きな方はもちろん、普段果物を食べる機会が減っている方こそ、果実香を訪れてほしいと思う。家とはちょっと違う、少し特別な体験ができるはずだ。
果実香
果実香 カミカ
各務原市神置町2-31-1
営業時間:8:00〜17:00(L.O.16:00)
定休日:水曜日(祝日は営業)
TEL:058-382-4070
田中 敦TANAKA ATSUSHI
滋賀県在住。岐阜の大学に通う学生。大学の講義やOFKのサイトを通して各務原の魅力に惹かれました。さらに各務原の魅力を知り、みなさんと共有していきたいです。