「自分の技術で食べていきたい」。普通科の高校に入ったが、進路選択が近づくにつれ、そう思うことが多くなった。

そんなとき、車を買った兄に、ドライブに誘われた。助手席に座った車は、トヨタのクラウン。中古だったが、よく手入れされ、乗り心地の良さに驚いた。「これだ、整備士になろう」。漠然とした思いが、確信に変わった瞬間だった。

高校卒業後は、自動車整備の専門学校へ。車の知識やメンテナンス技術を学び、今春には、念願の整備士として「岐阜トヨタ自動車株式会社」に就職した。

現在は、３人１組のチームで車体の点検や整備などを行う。学校とは違い、整備する車の向こうには「お客様」がいる。自分の点検での見落としが、事故につながる。そうならないために、必ず実践しているのが、「声かけ」だ。

ミスのない整備は、チームワークがあってこそ。お互いに次に行う作業を声に出すことで、見落としを防ぎ、フォローにも回れる。先輩から、「助かったよ」と言われると、思わず顔がほころぶ。周りから信頼される、「先輩のような整備士」。それが今の目標だ。

自分の整備した車が、今もどこかで走っている。そう考えると、身が引き締まる。「気を付けて、いってらっしゃい」。そう心の中で呟きながら、今日も整備を終えた車を見送る。

（広報各務原　2020年9月1日号掲載）

【板津　和樹　いたづ　かずき】
生まれも育ちも各務原市。入社１年目の20歳。休日の楽しみは、愛車でのドライブ。