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凛として。

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能楽師

船戸 昭弘フナト アキヒロ

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2023.01.27

引き戸を開けると、羽織に袴を身に着けた船戸昭弘さんが、小鼓を前に凛と座していた。こちらも自然と背筋が伸びる。話は、革、胴、調べなどから構成され、約200年も使い続けられるという小鼓の説明から進んでいく。流儀は幸清流、役は小鼓方。船戸さんは能楽協会に所属するプロフェッショナルの能楽師だ。

6歳の年の6月6日、初めて打った小鼓からポンと音が響いた。そこから船戸さんの小鼓とともに歩む人生は始まる。幼少期に古典芸能に触れる機会は少ないと思うが、きっかけは、たまたま小鼓の先生が身近にいたから。サッカーや野球を習うのと何ら変わりなかったそうだ。

一度就職したが、すぐに戻ってきてしまった。「これしかなかったから」と。
家元に師事し、ヨーロッパ公演など多くの経験を積み、昨年、各務原に戻った。これを機に地域を巻き込むようなイベントをと目論んでいたが、なかなか思うようにいかなかった。怒りや悔しい思いが原動力になるという船戸さん。誰かに頼っていては駄目だと自ら動いたのが、11月の村国座での公演「狂言と囃子の会」と市の小鼓講座だ。「狂言と囃子の会」は、観客を巻き込んだ囃子の疑似体験や狂言の演目の説明など、初心者にも分かりやすく趣向を凝らした内容で、能楽の面白さを十分に堪能できるものだった。

能楽のような古典芸能は、敷居が高いと言われることが多い。だが、「10年後には違うことを言っているかもしれませんが」と前置きをしつつも、「敷居は下げるのではなく、上げるんです」と言う。例えば服装。公演に何を着ていけばいいかの問いに困った時、お母様の「お洒落をしてこればいいのよ」の一言に、的を得ていると思ったそうだ。どんな服装でも構わないが、それぞれのお洒落を考えるだけでも、自身の気持ちを引き上げていることに他ならないのだ。

謡い手でもある彼の声は真っすぐ通る。噺家のような小気味のいい印象である。
「自分の力は3割でいい」
あとは周りにいる仲間や先輩たちが6、7割に引き上げてくれるから。そして余白を残す。だから、これくらいがいいのだとか。また、「ふざけて生きていきたい。だってまじめにやってないとふざけられないでしょ」なんて言葉をしれっと言えてしまうのも、今まで真摯に小鼓に向き合ってきたからこそなのだろう。
彼の小噺のような言葉は明確で、ストンと心に落ちてくる。

最後に小鼓を打たせてもらった。が、いい音など鳴らない。うん、私にはセンスがないらしい。諦めかけた瞬間、船戸さんの手が添えられるとポンと音が響いた。同時に胴に振動が駆け抜け、たまらなく気持ちいい感覚が体を貫く。6歳の船戸さんもきっとこの初めての感覚を味わったに違いない。

彼は言う。20代でつまらないと思ったものでも、50代になると面白いと思うことがある。それは、受け手側の精神的な変化だと。
小鼓を聞く場に赴いてみれば、その良さがじわりじわりと伝わってくるはずだ。村国座で「ヨーオッ」という掛け声とともに小鼓が華やかに響く日が来ることを期待している。

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2023.01.27

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