息を吹けば飛んでいってしまいそうな軽やかな氷は、スプーンを入れると音もなく崩れるほど、ふわふわとしている。
口に運べば、優しい味わいのシロップと溶けていき、その香りや爽やかな甘さだけをほんのりと残す。繊細である。
「使う氷は天然氷。名水として名高い八ヶ岳の蔵元から直接仕入れています。」そう話すのは店主の廣瀬大輔さん。
天然氷とは、厳冬の自然の中で、上澄みに出る不純物を取り除きながら2、3週間をかけて凍らせたものである。0℃に近い温度で少しずつ凍らせていくことで、不純物が少なく溶けにくくなり、薄く削り出すことができるのだという。
「旅先で食べた天然氷のかき氷に感動し、その感動を広めたかった。天然氷の価値を落とさない一品を提供したい。」と廣瀬さんは続ける。削る氷は、一旦常温で緩ませて、口の中で溶けていく温度を見計らう。削り出す角度や面を考え、刃の管理にも手を抜かない。シロップは、自ら足を運んで選んだ材料や果物などを直接仕入れ、お店に出す日の朝に煮詰めて調理する。
誤魔化しのきかないシンプルな一品だからこそ、ひとつひとつのこだわりが、直接、味に繋がっている。
もう一つ、つどいでは秋冬に向けた新メニューとしてパンケーキを出している。パンケーキをつくるのは、大輔さんの妻・志保美さん。何度も試行錯誤を重ねた独特の食感は、これまでのパンケーキの常識を覆す。
ナイフを入れると、まずメレンゲのような柔らかさに驚かされる。その食感は、添えてある生クリームとの境目が分からないほど滑らかで、口の中でほどけていく。淡雪のようなかき氷とはまた違い、濃厚なクリームをほおぼっているようだ。
「仕事や育児で頑張っている女性が一人でも気軽に来られて、ホッと一息ついて、エネルギーをチャージしてもらえたら嬉しい」と志保美さんは語ってくれた。
「つどい」という屋号には、食べた人が思わず「美味しい」、「幸せ」と笑顔になり、そんな笑顔が集う場所となりたいという願いが込められている。
夫婦二人三脚でこだわりを追及する一品に、思わず口元がほころんでしまうこのお店なら、きっとそんな願いが叶う場所になるだろう。