カクカクブックスは、那加エリアにある本屋さん。旧国道21号沿いの郵便局を南に入ってすぐ、住宅街に窓が大きく開いたお店が見える。店内に入ると「カクカクブックスには新しい本も古い本もあります。店主が気になる本を集めたセレクトブックストアです」なる説明書きが目に入る。セレクトショップと言うと服のイメージがあるが、ブックのセレクトストアとはこれ如何に。でもググってみたら全国的にはちょこちょこある。引用だが「オーナー独自の選書で他にない面白い品揃えをしている書店」とのこと、独立系書店とも言うようだ。
白を基調とした店内は清潔感があって、居心地グッド。大通りから一筋入っていることもあるからか、とても静かで、ゆったり時間が流れているように感じた。大型書店だと、本が背の高い棚にびっしり並んでいたり、平台にうずたかく積まれている様子をよく目にするが、このお店では一定の間隔を空けてのびのびと平積みにされている。個人的にだが、主役である本がとても大事にされているように感じるし、本それぞれの個性がより際立つようにも感じた。多種多様なデザインの装丁、目を引くタイトル、ついつい手に取ってしまう。静かな店内を好奇心の赴くままに歩き回るのは得難い体験だった。
カクカクブックスがオープンしたのは2022年11月。
高校生の頃から本格的に本を読むようになったという店主の尾関さん。いつしか本に魅了され、書店員としてキャリアを積んだ後、このお店を開業したんだそう。尾関さんは各務原市出身で、この店舗ももともとは尾関さんの祖父が青果店を営んでいた場所。オープン以来、着実にファンを増やしてきており、中には遠方から定期的に訪れる人もいるんだとか。小・中規模の書店の廃業が相次ぐ昨今、決して経営は楽ではないが、常連さんの「近くに本屋さんができてよかった」と言う声が励みになっているそうだ。
説明書きにもあった通り、自身が気になる本、ピンときた本を中心に品揃えしているという尾関さん。商業ベースに乗りづらい発行部数の少ない本、小さな出版社から発行されている本、ZINEなど大手が取り扱わない出版物に出会えることもカクカクブックスの良いところであろう。また、いわゆる「書店」の枠組みにとどまらないところも特長の1つ。店内の一角にはシェア本棚コーナーがあったり、定期的に読書イベントを開催していたり。地元の作家さん、クリエイターさんへ店舗スペースの提供も行っており、今回お邪魔した際も服や靴下のポップアップが開催中であった。作家さん、クリエイターさんが在廊していれば自然と交流が生まれるし、お客さん同士の交流も醍醐味だろう。様々な取り組みを通じてこのお店が地域のコミュニティを形成する上での拠点となっていることを実感する。正直はじめは入りづらいと感じることもあるかもしれないが、まずはSNSをチェック!興味のあるイベントなどをきっかけにして一度飛び込んでみてほしい。本を通じて自身の好奇心を満たしたり、新しい人や興味と出会ったり。きっとあなたにとってオンリーワンの場所となることだろう。
「本にまつわる商売が少しずつでも上向いてくれると嬉しい」と話す尾関さん。確かに自宅の周りでも小規模な本屋さんってめっきり見なくなったと感じる。そう言えば、域内に書店のない自治体も結構あるってニュースを読んだことがある。Amazonは便利だし、目的とする本が明確なら都市部の大型書店に行くのが正解だ。だけど、たまに立ち寄ってはゆるりと新たな興味を発見しに行く場所があってもいいんじゃないか。そういった場所が近所にある、市内にあるって実はとっても幸せなことなんじゃないだろうか。