岐阜各務原ICからすぐ北東に佇むTrattoria tartaruga。オーナーシェフの亀谷雅和さんが妻の亜希さんと2人で営む、十数席ほどの落ち着いた雰囲気のイタリア料理店だ。

「旬のもの、地元のものをシンプルにおいしく食べてもらいたい。」と常に考える雅和さんの手掛ける料理は、彩りの美しさが印象的。大衆食堂を意味するTrattoria(トラットリア)だが、ワンランク上のリストランテのようだ。

15種類ほどの野菜をふんだんに使った前菜はモザイク画のよう。食べてしまうのがもったいなく感じてしまう。
この日のパスタは、2種類の豆の緑と生ハムのピンクが春を思い起こさせるフェットチーネ。あっさりしたそら豆とスナップエンドウにペコリーノチーズを合わせることで深みを生み出し、最後に塩気の強い生ハムが全体を引き締める。
メインの仔牛肉のスペツァティーノは、優しくまろやかな味わいで煮込み具合も絶妙。ランチタイムであれ手元にワインが欲しくなる。
デザートのはっさくのシブーストとキャラメルジェラートは、満腹の胃袋に押し込む言い訳として十二分に甘美で、最後の最後まで一切の妥協がない。

雅和さんは可児市出身。静岡での大学、サラリーマン生活を経てイタリア料理の世界に飛び込み、イタリア、東京、長野と渡り歩いてきた。
転機となったのは東京での修行中のこと。信州や日本海側の生産者のもとへ足を運んで魅力的な食材と出会い、食材の旬、鮮度の違い、地域性を肌で感じた。「イタリア料理の世界では、地域ごとに必ずその土地の味がある」と、都会ではなく食材が豊富な地方で店を持つことを決心し長野へと移り住んだ。
ホテルで4年ほど腕を磨いたあと独立し、県内でTrattoria tartarugaをオープン。
店名の「tartaruga」はイタリア語で「亀」の意味。「流行りや人と同じことはしたくない」と、あえて自身の名前から名付けたそうだ。

地元・岐阜へ戻った後は各務原へ移住し、同業の知人からの紹介もあり、2020年6月から現在の場所に店を構える。
もともと各務原には縁のない亀谷さん夫妻だが、このまちに馴染むのに苦労はほとんど感じなかったという。
実際、好評が人づてにどんどん広まり店内は常に賑わいを見せており、口コミの影響は「想像以上」と亜希さんも驚くばかりだ。

今後も各務原を中心に岐阜県産の食材を自らの足で開拓していきたいという雅和さん。
土地柄や人に合った料理を振る舞う地域の台所として愛され続けるだろう。