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おがせ街道から案内看板を頼りに北へと進む。住宅街の細い路地を通り抜けると小さな橋のかかる神社が目に入った。ここ「村国神社」は、国指定有形民俗文化財「村国座」という舞台のある、江戸時代から続く歴史ある場所だ。
今日は、そんな由緒ある場所で、岐阜を代表するローカル音楽フェス「OUR FAVORITE THINGS(以下OFT)」のスピンオフ企画が開催される。OFTが始まった2009年からの5年間は、「村国座」で開催されており、本会場では実に8年ぶりの開催だそうだ。
神社に入り奥へと進み、案内された会場で検温を済ませる。ふと見上げた天井、舞台、桟敷席、床に至るまで、「村国座」のその迫力に暫く圧倒された。柱の1本1本は力強く、正面の舞台には大きな松が描かれ照明があてられている。まだ開演前であったが既に眩しかった。
靴を脱いで場内へ入るとき、裸足で来てよかったと思った。足の裏で直に感じる木の感覚がなんだかわくわくした。少し早く到着したこともあり、まだ前の席から空いていた。せっかくなので前の席へと向かう。
舞台に用意されていたのは1本のギターとマイク。バンドセットが組まれているいつものOFTとは違う、シンプルなセッティングに新鮮さを感じた。
演奏が始まると、アコースティックな音楽が会場を包み、ゆったりとした時間が流れた。少人数で静かに聞く音楽は、アーティストの声がストレートに舞台に響き渡り、圧巻であった。時には拍手、頭や足でリズムをとりながら各々が楽しむ。生憎降り続いていた雨は、穏やかに奏でられる音楽と重なり今日の舞台をよりいっそう演出してくれているようにも感じた。
あっという間に全ステージが終わる。名残惜しく思いながらも、退場の順番を待った。外はすっかり雨も上がり、小さな物販が出ていた。アーティストが自ら物販に立ち、お客と静かにあいさつを交わす。こんなにアーティストを身近に感じられるのも、今回ならではのように感じた。
今日の舞台に訪れた観客は100人程度。そのためだけに作られた舞台というのはとても贅沢で貴重なものに感じ、そのひとりとして居られたことを改めて嬉しく思った。
「これからも、このフェスにとって良い形で続いていってほしい。」そう語ったアーティストの想いは、誰もが共感しただろう。
歴史ある場所で感じた、まちとアーティストとの心地よい繋がりが、これからも絶えず続いていってほしいと願う。
文:OFKライター 村瀬恵里佳