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職人と作家が生み出す新しい色、新しい未来。

FEATURE

職人と作家が生み出す新しい色、新しい未来。

職人と作家が生み出す新しい色、新しい未来。

アートでうごかす・アートでつながる「ART BRIDGE」第一弾が始動。

2020.10.07

今年度よりスタートした、各務原市の新たな取り組み「ART BRIDGE」。「アートでうごかす・アートでつながる」をコンセプトとし、アートと地域資源のコラボレーションによって、市内のヒト・モノ・コトをさらに活発に発信していくというもの。その第一弾として、日本画や掛け軸の素材として使用されてきた「絵絹(えぎぬ)」という特殊な布製品を市内で生産する織物業者・苅周(かりしゅう)株式会社をフィーチャー。「美濃友禅染め」という独自技法を使って作品を生み出してきた、岐阜市在住の染織作家・河村尚江さんとのコラボレーション作品「絵絹タペストリー」が企画・制作された。従来の絵絹の使い方にはない発想から形となったこの一品は、まさに「アート」と「産業」が一体となった賜物と言えるだろう。職人とアーティスト、立場もスタンスも違う両者がどのような思いで今企画と向き合ったのか?苅周株式会社の4代目・苅谷成彦さんと、染織作家・河村尚江さん、それぞれの作業場へお邪魔しお話を伺った。

職人としてのプライドが
真っ白な絵絹を作り出す。

 


「最初はこの仕事を継ごうって考えてなかったんですが、気付いたら後を継ぐことになっていました」と苅周株式会社4代目・苅谷成彦さん。

ー今回のコラボが実現に至った率直な感想から教えてください。

苅谷:こんなご時世でも、まだ私にやれることがあるんだ、と思いましたね。ありがたい話です。

ー絵絹って素材自体、あまり一般的ではないので初めて知ったのですが、どんなものなのでしょうか。

苅谷:一番の需要は日本画、掛け軸ですね。素材としては一言で言えば、すごくデリケートな素材です。糸の加工をせずに編んでいくので、ほんの少しでも傷が入ったりすると、筋が入ってしまって、そしたらもう商品にならないんですよ。今こちらにお持ちしたこの絵絹もよく見てもらうと、ここに筋が入ってるでしょ?これはもうダメなんです。

ー(どこに筋が入ってるのか)ほとんどわからないですよ(笑)。かなり注意深く見て、ようやくうっすら見えるくらいの筋ですね。このレベルでもうダメってことは、制作から出荷までかなり細心の注意が必要になるんですね。

苅谷:油とかで後加工ができれば、もう少し滑りが出て強度も増すんですが、絵絹の場合は日本画の絵具を弾いてしまわないように、何も後加工をしない生糸そのままの状態にしています。最終的にシルクスクリーンの版のように木枠を付けるのですが、木枠に貼って水をつけてそのまま乾かすと糸が縮んで、パンッと張った状態になるんです。この張りがないと絵が描きにくいわけです。後から、縮ませることを想定した製法は、絵絹ならではの特徴です。逆に普通の布製品が水をつけても縮まないのは、糸にそういった後加工がしてあるからなんです。

ーなるほど、自分たちが普段から見たり触ったりしている布製品に比べると、布というより質感的にプラスチックやビニールのような固さも感じました。

苅谷:そうですね。掛け軸以外だと、お坊さんが着ている法衣だったり、四国の八十八ヶ所巡りなどで使われている朱印帳にも使われていたんですよ。

ー今回、染織作家の河村尚江さんとのコラボについては、どういった経緯で?河村尚江さんについては、もともと知っていましたか?

苅谷:今回の企画の担当者である各務原市役所いきいき楽習課の廣江貴子さんが1年ほど前にご紹介くださって、初めて知りましたね。これまでにも日本画の方とはご一緒してきた経験があったんですが、廣江さんからのご提案が「染織作家とのコラボ」ということで、おもしろいな〜と思いました。

廣江:絵絹は時代の流れもあってニーズが減ってきている製品で、さらに後継者不足にも陥っている状況です。だから、まずは知ってもらうきっかけになるようなことをしたいと考えました。

苅谷:昔は各務原市内に他にも絵絹製造業者はあったんですが、今はほぼうちだけになりつつあります。生活スタイルの変容によって掛け軸の需要が減っていったことが大きいと考えます。

ーなぜ各務原で絵絹生産がされ始めたんでしょうか。

苅谷:実ははっきりとした理由はわかっていなくて。もともと絹織物って京都が産地だったんですが、大昔に大火があって京都の職人たちが外へ出ていったんですね。各務原にも京の職人がやってきて、織物の技術が伝わったのが最初じゃないかと言われています。高度経済成長期には、絵描きの人たちを集めて、岐阜から全国へと掛け軸を発売している業者があったんです。そういう需要もあって掛け軸のキャンパスとしての絵絹の特産地となっていったのかもしれません。

廣江:もともと絵絹は日本画の基底材(洋画でいうキャンパスのこと)に過ぎないという見られ方をされてしまっていて、絵絹の素材そのものには注目されにくい状況でした。今回のコラボでは河村さんに絵絹そのものを染め上げてもらい、透け感も美しく、手で触れてみたくなるような、絵絹の素材感を楽しんでもらえるものになったかと思います。

ーそういった背景を踏まえての新しい動きとして今回の企画が立ち上がったんですね。今回のコラボ作品のタペストリーは、青・赤2色展開となっているんですよね?

苅谷:清流をイメージした青と、太陽のイメージの赤ですね。河村さん自ら一点一点手作業で染めていますので、グラデーションの具合も違いますし、同色の製品でも同じものは一つとない一点ものです。図版はあえて無しで、色だけのシンプルな表現となっているので、和洋問わずどんな部屋に掛けてもハマると思います。

廣江:素材の特徴が活かせられるものをとお願いしました。河村さんには何度も色の濃度を試してもらい、苅周さんにはタペストリーのフチの部分の仕上げ方を試行錯誤していただきましたね。

ーなるほど。皆さんの思いとこだわりがこのシンプルな造形の中に詰まっているんですね。

苅谷:単なる(日本画を描く)素材として絵絹を織っているだけ、ではつまらないじゃないですか。だから、「絵絹」という素材をどんな形で活かせるのか?を常に考えていきたいと思っていて、それを「工房」という意味で、絵絹作りに対する自分の姿勢として、名刺に「WORK SHOP」と入れています。お客さんや絵描きの方からの提案に対して「できません」で片付けるのではなく、ちゃんと試行錯誤して応えたい、そんな姿勢や気持ちを表したつもりです。

ー苅谷さんがもともとそういったお考えを持っている方だったからこそ、今回のようなコラボ企画が実現できたのかもしれないですね。絵絹作りで他に大切にされていることってありますか?

苅谷:今は絵絹製造業者はほぼうちしか残っていないわけですから、逆に物凄いプレッシャーですよ。比べられるライバル業者ももういないわけです。1ロール22メートル単位で販売しているんですが、22メートル買ってもらったらやっぱり22メートル最初から最後までちゃんと全部使えるものじゃないと、と思っています。そのためには、一点のミスもない製品を作り続けたいと思っています。意地とプライドですね。

 

真っ白な絵絹を自然界の色で
鮮やかに染め上げる。


自宅にアトリエを構え作業を行う、美濃友禅作家・河村尚江さん

ーではまず制作のプロセスについてお聞きしたいんですが、先にデザインやイメージを固めてから布に向かうんですか?

河村:基本的にはそうです。最初に色のバランスや、どんなデザインにするのかは決めて取り掛かります。ですが、実際に布に色を入れたときに染料がどのように流れていくのか、染まるのか、は布一枚一枚の状態によって変わりますので、そこは予想がつかないとも言えます。

ーなるほど、一枚一枚の布とのやりとりが制作する上で奥深さでもあるってことですね。型染めで使う版もご自身で作られているんですか?

河村:型染めで使う型紙がこちらです。鉛筆で輪郭を書いて、それをカッターナイフでくり抜いていくんです。

ーかなり緻密な作業ですね。植物のモチーフが多いんですね。

河村:たくさんスケッチをして、その中から印象に残っている曲線をデザインにしていきます。花のデッサンを高校在学中に通った予備校の先生に褒められて、それが今のデザインにもそのまま直結していますね。

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ストレイテナー 「BROKEN SCENE TOUR 2017 AW」 東京 新木場 STUDIO COAST 12.12 ONE MAN LIVE お疲れ様でした‼︎ 大山純さんにシャツを着ていただきました。ありがとうございました! SNSから沢山の投稿を読ませていただき、素晴らしいステージの感動が伝わってきました✨ 今回は「灯り」の曲からイメージが膨らみました。ストレイテナー ×秦基博 コラボ、本当におめでとうございます! 街中で曲が流れているのを耳にする度に嬉しくなります。 優しさに溢れた素敵な曲です。 夕暮れから夜に向かって移り変わる街の色、光や温もりを描きたいと思いました。 ラスト2つのツアー頑張ってください!とても楽しみにしています。 #ストレイテナー #大山純 #テキスタイルデザイナー #textiledesigner #河村尚江 #naoekawamura #japan

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多数のコラボワークを手掛けている河村さん。なんととあるご縁からロックバンド・ストレイテナーのGt.大山純の衣装デザインも!

ー布を張った状態でハケで染めていくこのような染め方ってもともと日本にあった技法なんですか?

河村:そうですね。昔からある日本の技法なんです。藍染めのように、布を紐などで括って染料の中に浸けるような染め方の方がよく知られているかもしれないので、海外の方なんかはびっくりされることもありますね。私のやっている友禅染めは布に染料をハケで塗っていって、最後に蒸し器で蒸します。そこで色が布に定着するんです。

ーなるほど。では、今回のコラボについて聞いていきたいと思いますが、絵絹についてはもともとご存知だったんですか?

河村:絵絹は今回の企画で初めて知りましたね。各務原にこんな産業があったんだ!って。第一印象は、これまで私が使っていたシルクオーガンジーと透け感は似ているなと。じゃあこれに染めたら一体どんな仕上がりになるんだろうって大変興味を持ちました。

ー実際に染めてみてどうでしたか?

河村:驚いたのは、染めても染めてもどんどんと色が入っていくんです。イメージした色の深みや鮮やかさが出ました。これまで扱ってきた絹の中でも一番綺麗に発色する素材なのではないかと思いましたね。

ー今回のコラボ作品で、イメージされたのが「清流」の青と、「太陽」の赤とのことですが、普段から自然物からのインスパイアを受けたりしてるんですか?

河村:最近は、私自身、滝だったり海だったり、自然界にある景色に気持ちが動かされますね。

ーそういったご自身の体験は、作品作りに影響を与えているんでしょうか。

河村:そうですね。常々、人の心に届くような、気持ちを動かすような作品を作りたいと思っています。私の作品を前にして気持ちが穏やかになったり、希望を感じていただけたら、と思っています。アートも音楽も共通するのは、自分ではどうしようもない時に、救われたりするものだと思います。「ここに立っているとすごく浄化されたような気持ちになった」ってお客様から言われたことがあって、色彩って人にダイレクトに影響を与えるものだと思うんです。一点ずつ単体の作品ももちろん見てもらいたんですが、展示の場合は布と布のレイヤーの重なりも含めて、空間全体で景色のように見てもらえたら嬉しいです。


 

お二人がこれまで築き上げてきたスキルとセンス、新しいことに対する挑戦心、モノづくりに対する真摯な思いが編み込まれた今回のコラボレーション。単に「産業」と「アート」を結びつけただけでは生まれない優しい色彩を作品から感じ取ることができるのではないだろうか。

今回取材させてもらった、苅谷さんの絵絹と染織作家・河村尚江さんのコラボ作品が展示される展覧会「河村尚江染織展 -流転-」が、10月17日(土)~ 11月3日(火・祝日)中央図書館にて開催。11月3日(火・祝日)には、市民公園にて開催される「かかみがはらアートピクニック」のアートプログラムとして、河村さんが絵絹をその場で染める公開型制作や、染色体験や絵絹に日本画を描くワークショップもあり。是非この機会に、絵絹を間近で見て、手にとって触れてみてほしい。

河村尚江染織展 -流転-/滞在制作「えぎぬを染める」

河村尚江染織展 -流転-
開催期間:10月17日(土)~ 11月3日(火・祝日)
開催時間:午前10時~午後5時
夜間開館日:10月23日(金)~午後7時
(注)休館日:10月19日(月)・26日(月)・11月2日(月)
会場:中央図書館3階展示室A、B
入場料:無料

滞在制作「えぎぬを染める」
日時:11月3日(火・祝日)午前10時~午後4時
場所:市民公園内「かかみがはらアートピクニック」アートピクニックブース

染色ワークショップ「友禅染め・型染め」
時間:
①午前10時30分~11時30分
②午後1時~2時

日本画ワークショップ
時間:
①午前11時30分~12時30分
②午後2時~3時

【イベント詳細】https://ourfavorite-kakamigahara.jp/2020/09/30/8979/

2020.10.07
LIVERARY

WRITER PROFILE

武部 敬俊LIVERARY

名古屋を拠点に、ローカル/カルチャートピックスを日々発信/提案しているウェブマガジン「LIVERARY」編集部の武部です。岐阜県各務原市の魅力を市民協働で発信していくサイト「OUR FAVORITE KAKAMIGAHARA」をお手伝いしています。市民ライターの方々と楽しみながら記事を制作していきたいと思っています。どうぞよろしくです。

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