鵜沼宝積寺町地内、日本ラインうぬまの森を背に木曽川西岸に面して建つ貞照寺。昭和８年に、日本初の近代女優である川上貞奴が建立したお寺である。歴史は浅いが、優美に構え立つ姿が印象的だ。

本堂はコンクリートの基礎上に総檜造りで築かれ、近代的でモダンに見える。貞奴は美意識が高く、「後世の人が訪れ見ることも考えて造られたのでは」と管理者の一人である榑谷照生さんは言う。
お寺というと、威厳があり格式高く参拝などの用がないと足を踏み入れづらい印象はないだろうか。しかし、貞照寺はどこか入りやすい雰囲気が流れている。多種多様な人を受け入れてくれる自由感とでも言えばいいのか。正面以外からも境内に入ることができ、間口が広い。境内はやわらかい空気に包まれ、居心地が良い。藤棚を屋根にベンチが並べられ、ゆっくりと時間を過ごすことも可能。公園感覚で訪れ、四季を感じる時間を過ごすのも良い。自然と深い呼吸になり心が落ち着いていくのがわかる。　
ここは貞奴に因んで諸芸上達・芸能祈願のため多くの人が訪れる。間口の広さや自由感は参拝にも表れている。ヒップホップダンスの上達を願う学生さんはダンスを奉納。市内中学校吹奏楽部の生徒は本堂で演奏をしたとのこと。伝統を軽んじているわけではなく、人の想いを汲み、枠に捕らわれないお寺なのだと感じる。大小ステージは人それぞれ違ってもステージに立つ想いは同じ。どんな人の想いにもスポットライトを照らしてくれる。与太話だが、某アイドルもオーディション前に貞照寺を訪れていると聞いた。ここで詳細を載せられないのが本当に残念で仕方ない。
イメージと違う話は他にも。貞照寺では今年１１月中旬にマルシェを開催。コロナ前から企画していたとのことだが、ようやく開催に漕ぎつけたと榑谷さんが嬉しそうに話をするのが印象的だった。お寺とマルシェとあなた、奇妙な組み合わせにも思える瞬間がきっと楽しい。境内の空気感も参拝方法も自由感があると感じたが、ここで働く人もまた自由な発想を持っている。若い人たちにもっと貞照寺という素敵な場所を知ってほしいという想いを強く感じる。是非足を運んで、まずは境内の空気を吸うきっかけにしてほしい。

ソーシャルディスタンスが叫ばれている昨今、心の距離は離れないように。未来（あす）を照らすやわい場所を見つけた。